『深夜快速の旅?マレーシア篇』 Chapter7
二日目、日が昇った。
まだ午前7時。日本にいたときには、想像もできないほどの早さだ。
殺風景な部屋からリュックサックを担いで、チェックアウトをしった。
一段ずつ、肩の重力を抱えながら階段を降りてゆく。
もう泊まることのないこの宿を背に。
とても清清しい朝だった。
昨晩の喧騒が嘘のように中華街は静かだった。
数件の店では、人々がシャッターを空け始めていた。
朝食の前に、近くの建物を覗いてみようと思った。
2分も歩くと中国寺院の関帝廟が目に入った。
木組みの風鈴のような装飾が吊られた門をくぐると、こじんまりとした広場が出現した。
早朝にも関わらず熱心な人々が線香を炊いていた。
関帝とは三国志演義に登場する武将、関羽雲長の事で、
商売の神として世界中の華僑に祀られている。
KLの中華街の守り神のような存在なのだろう。
人々の真似をして、手を合わせておいた。
煙をかぶって外へでると、目の前にはヒンズー寺院が構えていた。
スリ・マハ・マリアマン寺院といって、マレーシア最大のヒンズー寺院だ。
見ると、門の下に靴が大量に並んでいた。
前人に習って、私も靴を脱いで裸足で中へ入っていった。これは絶対だ。
中央には豪奢な大きな建物が広がっていて、脇には小さな祠がいくつか並んでいた。
人々は周囲の祠と中央の建物を周回し、一通りの作法が終わると
床に座って仲間と世間話をするようだった。
面白かったのは、
数人の女性を侍らせて、輪の真ん中で男が一人楽しそうにしているグループがあった事だ。
恨めしくも羨ましくもなく、その男の無邪気そうな顔を見ていると、とても微笑ましかった。
寺院を出ると、腹が空いてきた。
朝食を摂ろうと思い店を探してみると、香辛料の匂いにぶつかった。
わずか4坪もなさそうな店で、チャイらしき飲み物をすすりながら3人のインド人が談笑していた。
店の主人は30才くらいの若者で、感じのよさそうな男だった。
タンドリーチキンの旨そうな匂いにつられて近寄った私に
一尾を見せて、買わないかと誘ってきた。
彼の紳士的な笑顔につられて、二つも買ってしまった。
見た目ほどは辛くはないが、旨みのスパイスが効いていて美味しかった。
公衆電話からマレーシア航空のリコンファームを終えた。
セブンイレブンで飲み物を補充し、まずは、KLの街を散策してみることにした。
気を満たして腹を満たすと心地よく、今日から俺は、そんな気分になった。