『深夜快速の旅?マレーシア篇』  Chapter9
マレーシアで初めての昼食をとることにした。
ロット10の交差点からやや離れた場所に
オーバーシーという名の中華レストランがあった。
なかなか大きいレストランで、来店客も多く、
味ははずれなそうな気がしたので、私の腹の虫はそれを求めた。
きれいなレストランだった。
高級な内装を施した地元の名士達が集うサロンの様相ではなく、
地元の中流ファミリーや付近の自営業者の連中が、
やや晴れの日に使うような店だ。
給仕係も愛想がよく、一人でぶらりと立ち寄ったバックパッカーにも
親切に応対してくれた。バンバンジーとチャーハンとスープ、
ドラゴンフルーツというこの国の特産果実のジュースを二杯飲んで、
40RM、約1200円だった。豪勢にお金を使ってしまったが、
昨晩の無味なチマキと比べると、味もおいしく、大変に満足だった。
店を出ると、昼間の街が広がっていた。
ビルと道路と車とバイク。歩行者はあまりいない。
近くには、伊勢丹を始めとする商業ビルが数棟。
カーディーラーにはスーツを着た営業マンが立っていた。
やはり、そこは都市の昼間だった。
昨日初めて、クアラルンプールに来たのに、まだ見所はたくさんあるはずなのに、
私の関心はクアラルンプールにはなく、別の方向へ向いていった。
「海が見たい」
日本から飛行機で南下してきた。赤道との距離は近づいている。
地図でマレーシアの全土を俯瞰してみる。
私の視線は一つの街に定まっていた。
マラッカ。
夕日の落ちる町。大航海時代より、あるいは私の知らないそれ以前より、
その街には歴史の面影があるはずだ。かつて、街に風を感じて外洋を眺めた歴史を
創った人々と、同じ夕日を見てみたかった。
今回の旅で、必ず寄ろうと思っていた町だ。
旅の羅針盤は、マラッカを指していた。
早く行きたい。
そう思うと居ても立ってもいられなくなり、
私の足は、クアラルンプール最大の長距離バスステーション、
ブドラヤバスステーションに向かっていた。